行動経済学の逆襲
「行動経済学の逆襲」を読んで、合理的ではない行動をしてしまう人間の心理とその原則、サービスやデザインとの関係性などについて話しました。
- オープニングトーク: 福岡からの収録
- 行動経済学の逆襲 | リチャード・セイラー, Richard H. Thaler, 遠藤 真美 |本 | 通販 | Amazon
- 3分でわかる!アダム・スミス『国富論』 | 読破できない難解な本がわかる本 | ダイヤモンド・オンライン
- 3分でわかる!マルクス『資本論』 | 読破できない難解な本がわかる本 | ダイヤモンド・オンライン
- 雇用・利子および貨幣の一般理論 - Wikipedia
- 筑摩書房 渋沢栄一 現代語訳 論語と算盤(そろばん) 守屋淳訳
- 実践 行動経済学 | リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン, 遠藤 真美 |本 | 通販 | Amazon
- 豪雪で立ち往生の車に500人前 餃子の王将、無償で:朝日新聞デジタル
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質問
- あなたは致死率の高いまれな病気に感染していて、1週間以内に死んでしまう可能性が7/1000の確率であります。この病気の治療薬は今一人分だけあり、その薬を飲むと1/1000まで確率が減ります。最も高い価格をつけた人にこの薬を売るとして、あなたはいくら払いますか?
- 世界的パンデミックによって、全ての人は1/1000の確率で1週間以内に死んでしまう病気を患ってしまいました。そんな中とあるクスリの治験に参加すると死んでしまう可能性が7/1000まで上がってしまう事がわかりました。あなたはそのクスリの治験に参加しますか?参加するとして、いくら貰えるなら参加しますか?
- 1/1000と7/1000の間の価値の差は理論上同じであるはずだが、それぞれの状況によって人の答えは変わってしまう
- それまで普通とされてきた経済学上ではありえない結果
経済学的なことが学べる本
- 「国富論」アダム・スミス
- 「資本論」マルクス
- 「雇用・利子および貨幣の一般理論」ケインズ
- 「論語と算盤」渋沢栄一
本書は?
- 2017年のノーベル経済学賞に選ばれたリチャード・セイラーという人が、それまでの経済学に異を唱えて、それまでの経済学では説明しきれなかった経済や人々の動きについて解明し、それを行動経済学と名付けて、経済学者たちと長年戦ったエッセイのような記録
- 経済モデルと矛盾する行動を集めたリストをつくっていた
- 前半は主に行動経済学についていろいろなエピソードを踏まえながら解説していく
- 後半は経済学とのバトルに重きが置かれる
- 自伝的な部分があるので、手っ取り早く行動経済学を学ぶのにはおすすめしないかも
- でもエピソード豊富で面白い
- 8部(34章)527ページ
- 文庫本上下巻あり
- 実践 行動経済学
- ナッジ(Nudge)とは「ヒジで軽く突っつく」ように、強制やインセンティブ(金銭的動機付け)に頼らず、人々を賢い選択へと導くちょっとした工夫。社会にナッジを組み込めば、より快適に暮らすことができる。
行動経済学とは?
- それまでの経済学
- 合理的で打算的な最適化された行動をする人間(ホモエコノミカス)だけで構成される前提とした世界や経済の動きについて考える学問
- 最適化+均衡=経済学
- 均衡…需要と供給の均衡
- 経済主体は最適化行動をとり、市場は安定均衡に向かう
- 行動経済学
- 数値だけでは表せない、人間(ホモサピエンス)の心や精神面も含めて考えようとする学問
- 人間の意思決定に影響を与える要因は合理的で打算的なことばかりではない
- 意思決定に影響を与える要因がなんであるのかを解き明かす
- 心理学や経済学などを総合して考える
機会費用と保有効果(第2章)
- 機会費用
- ある活動を選択することで失われる(対価として払っている)利益
- 楽しみにしていたサッカーの試合を見るのを諦めて、買い物に出かける
- 買い物に出かけることを選択したことで、「楽しみにしていたサッカーの試合を見る」のを機会費用として支払った
- クレジットカードが使われ始めた頃のこと。小売店にクレジットカードを導入してもらいたかったが、小売店はクレジットカードでの支払いの客には現金で支払う客に比べて手数料分を上乗せしたいと考えていた。当然、クレジットカードでも現金と同様の価格で売ってほしかったが、裁判の末、小売店の主張が勝訴し価格は自由に決められるものとなった。そこでクレジットカード会社は小売店がどうしても価格差をつけるというなら、カード価格を「通常価格」とし、現金客には「割引」するようにしろと言うようにした
- 割増分を払うと実際に懐が痛むが、割引を受けられないことはただの機会費用を払ったに過ぎない
- 保有効果
- 人はすでに自分が保有しているものには、いつでも手に入れられる状態にあるがまだ保有していないものよりも高い価値を感じる
- 300円の宝くじの実験
- ランダムに配られた300円と宝くじどっちを選ぶ
- 現状維持バイアス
心理学からのヒント(第3章)
- 論文「不確実性下における判断──ヒューリスティクスとバイアス」
- が意思決定に費やせる時間や知力には限界がある。そのため、何かを判断するときに、簡便な経験則、つまりヒューリスティクスに頼る
- 経験則(ヒューリスティクス)には予測可能なエラー(バイアス)が入り込みやすい
- ホモ・エコノミクスは経験則で判断することはなく、常に現在の状態と合理性から次の選択をするのでエラーはないか、あってもランダムに起こるものでプラスマイナスで打ち消し合うため、ないものとして考えれば良いとされていた
人間は状態ではなく変化で考える(第4章)
-
プロスペクト理論(師匠の論文)
- プロスペクト=期待、見込み
- 不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害などに関して、人がどのように評価・選択をするか記述するモデル
- 規範的(数値などで求められる最適解)ではなく、記述的に(実験などで観察された経験的事実から出発して記述する)構築された理論
-
いくつかの認知バイアスがあることを導き出した
- 価値の増減・変化に対する人の反応は線形ではない
- 同じだけ富が増加しても1度目より2度めのほうが価値が減少する
- 富が多ければ多いほど、同じだけ増加しても価値は減少する
- 感応度逓減(ていげん)性
- ウェーバー・フェヒナーの法則とは、人間の感覚量は、受ける刺激の強さの対数に比例するというもので、人間の五感への中程度の刺激に対しては、良い近似となることが知られています。
- 人は人生をトータルから見た現在の状態ではなく、現時点からの変化で考える
- 変化には敏感に反応するが、同じ状態が続くと反応しなくなる
- 慣れる(時間とともにリセットされる)
- 生活水準も変化で感じる
- ホモエコノミカスは数値的に絶対的な指標でしか物事を判断しないが、ホモサピエンスは現状からの相対的な視点で物事を見ている
- 富の増加よりも減少の方が価値が大きく変化する
- 富の増加よりも減少の方が認知的に価値が大きく変化する
- 得したときよりも、数値的に同じだけ損をしたときのほうが心理的な痛みを感じやすい
- 価値観数の画像はこちらを参照してください↓
- 価値の増減・変化に対する人の反応は線形ではない
-
これを応用して考えると、何も得ていない状態(無学)とはある意味で、ものすごく幸せ(変化的な価値)を得られやすい状態とも言えるお得なことなのかもしれない
- 新しいことに挑戦したり、学んだりすることは手っ取り早く幸せを得る手段となりえる
- 逆にアスリートは本当に少しの成長と感じることのためにとんでもない努力をしているのかもしれない
- →数値的な指標の重要性
ギャンブルの心理
- 3万円もらった上で、次のどちらを選ぶ?
- A…確実に1万円もらえる(72%)
- B…50%で2万円もらえて、50%でもらえない(28%)
- 5万円もらった上で、次のどちらを選ぶ?
- A…確実に1万円失う(36%)
- B…50%で2万円失い、50%で失わない(64%)
- 損失回避性
- プロスペクト理論にあったバイアスのように、人は富の増加よりも減少の方が変化や痛みを感じやすい、そのためできるだけ損失を回避しようと行動をする
- リスクと期待が表裏一体のギャンブルだと、勝っているうちは損失を招くようなリスクを回避しがちだが、負けている場合はリスクを追求してでも勝ちを取り戻そうとする
- 負けている場合には少しの勝ちでも価値を大きく感じやすいという認知バイアス
(ちなみに)別章で紹介されている話
- 後知恵バイアス
- 人は、何かが起きた後で、それが当然の結果だとまでは思わないまでも、あたかも自分は前もってそうなるのではないかと予想していたかのように考えてしまう傾向がある
- 例:競馬で迷った末に買った馬券が外れ、迷っていたもう一つの方を買っていれば買っていた。このときこっちの可能性のほうが高く、実際に買った方には大きなリスクがあったと結果が出てから思い込む
- 勝っているときの心理、負けているとき心理(第10章)
- ハウスマネー
- 勝って得た金は自分のお金ではないという心理
- 負けているときのほうがリスクを取って大勝ちを狙いやすい
- ハウスマネー
費用はいつ損失になるのか?(第7章)
- 300円でサンドイッチを買ったときに、300円損したように感じるのか?
- プロスペクト理論のS字の関数で考えると、同じ利得の喜びよりも損失のほうが大きく苦痛を感じるため、買うたびに損してると感じてしまう→そんなわけない
- 解明するにあたって2つの心理的効用について考えた
- 獲得効用
- 得られる価値の差分(支払う額(価値)と得られる価値(効用)の差)
- ホモエコノミカス的な考え方
- 取引効用
- 参照価格(経験上想定している価格)との差によって感じる価値の差分
- 先程のクレジットカードの例も参照価格をどこに定めるかという視点を変える話
- 参照価格は、その人の中にある過去の経験や状況によって変化する
- 高級リゾートホテルのビール
- 消費者はこんなふうに考えるので、売り手には、知覚される参照価格を操作して、「お買い得だ」と錯覚させるインセンティブが働く
- 希望小売価格(実際よりも安く見せるための参照価格の例)
- 永続的に続くセール
- (ちなみに)「限定」は現在バイアス(未来よりも目の前にある事柄を過大に評価)
- いつでも低価格はたいてい上手くいかない
- コストコ
- →掘り出し物を探そうという心理が働くように設計し、それが取引効用を促進している
- コストコ
サンクコストと時間経過による変化(第8章)
- サンクコスト(sunk cost)
- 埋没したコスト
- すでに支払ってしまって、取り戻すことのできないお金や価値のこと
- お金だけでなく、それにかけた時間などもコストとなる
- サンクコストの効果は時間がたつにつれて薄らいでいく
- スポーツジムの年会費を払った最初の方は頻度高く通うが、段々と行く回数が減っていく
- 支出の減価償却
- 損失感は時間とともに薄れていく
- 編集により切り捨てられた素材(アウトテイクというファイルに作ってまとめることで痛みを和らげる)
- アフタートーク
メンタル・アカウンティングとメンタル・バジェット(第9章)
- 心の勘定科目
- 家計を種類別に袋分けする意味
- →心理的にも別のものだと意識づけされる
- とはいえ同じ「お金」に特別な種類はなく、ホモエコノミカス的には同じお金として考える
- 支出をわかりやすく管理するという意味では良く機能する
- ただし状況によっては非効率的(非合理的)な判断を下してしまうことがある
- 駐禁の罰金で1万円取られたグループと野球の観戦に行って1万円使ったグループ
- 週末にある応援しているサッカーの試合のチケットを買う割合
- 心の勘定科目にある娯楽費を消費しているか?の違い
- →心の予算(メンタル・バジェット)
- いつも買っているものの価格が下がったら、グレードを上げる?
- 家計管理にしっかり取り組んでいる家庭は、家計をうまくやりくりできるようになる。同じことは、規模の大小を問わず、企業にも言える。しかし、金融危機の余波で景気が大きく冷え込んでいるのに、ここぞとばかりに自分の車に入れるガソリンのグレードを上げてしまうといったように、予算分けをしているせいでまずい意思決定をしてしまうこともままある
現在と未来に感じる価値の違い(第11章)
- 現在の消費を将来の消費よりも選好する傾向は時間とともに逓減する
- アイスクリームがいますぐ食べられるか、明日まで待たないといけないかはとても重要だが、来年の今日とその前後の日との選択となると、ほとんど気にならない
- 将来の快楽は小さく見えてしまう
- 割引効用モデルという考え方
- いま消費することは後で消費することよりも高く評価される
- 時間とともに価値が割り引かれていく
- 現在バイアスが働いている
- →未来よりも現在の価値がもっとも高くなる
ビジネスへの応用(第13章)
- 資金難スキー場は客に文句を言われることなくリフト券の値上げするにはどうしたらいいか?
- 値上げした上で、とある条件下では安くなる割引プランを作る
- クレジットカードと同じ保有効果
- 平日利用などを含めた割引の回数券
- 地元客は何度も行ける上に以前より安くなる
- 遠方客は移動費や宿泊費などたくさん使うお金の一部なので値上げ分はそこまで気にならない
- 感応度逓減(ていげん)性
- 事前に資金を回収できることで、資金難のリスクを減らせる
- 回数券は通常の60%の価格で売ったが、結果として利用率は60%だった
- つまり総合して客が払ったお金はおなじになった
- しかし、客がスキー場に文句を言うことはなく、自分が悪いと思うか、満足するかだった
- 客は購入段階は投資と考えているが、使用時(消費時)にはコストがないと精神的に感じる
- 今年も回数券を購入すれば、去年分も利用できるようになります
- →スキー場はさらなる公正な努力をしていると、客に満足感を与える
- 次回購入時に使える50%値引きクーポンも同じ話で、実際に安くするより効率的にお得感を感じてもらえる
- 値上げした上で、とある条件下では安くなる割引プランを作る
- GMの余った車の話
- 決まって新モデルが発売される季節の前になると車が売れなくなるが、余った車をどう売るのか?
- 値引きとキャッシュバックの違い
- メンタル・アカウンティング的な考え方
- 値引きの場合は、500万の車が470万円で30万円安く買えるという印象になるが
- キャッシュバックの場合は、500万の車を買うと別で30万円もらえるという印象になる
- 同じ5万円だが、心の勘定科目的には別の5万円なので、心理的にキャッシュバックの5万円の方が自由に使える便利なお金に見えてしまう
- 消費税はどうなる?…キャッシュバックに消費税は乗らない
- 超低金利ローンキャンペーン
- 他社は通常10%超のローン金利であるのに対し、2.9%の超低金利ローンキャンペーンを行った
- キャッシュバックよりもウケたらしいけど、実際にはキャッシュバックを選んだほうが得だったらしい
- GMが2.9%にした理由は特にない
- 筆者は「低金利キャンペーンが成功した理由を解明すること」と「競合他社が同じようなことをしてきた、将来の対策を考えること」の2つを提案した
- GMは、来年は余らないようにするので、2つの提案を却下した
- 実験し、テストし、評価し、学習することは大切
- 状況の分析・評価という意味では前例の小さなスキー場の方が実践していた
- その後、GMは一度も車を余らせずに売ったことはない
- 実験し、テストし、評価し、学習することは大切
- 値引きとキャッシュバックの違い
- 決まって新モデルが発売される季節の前になると車が売れなくなるが、余った車をどう売るのか?
何を公正と感じるか(第14章)
- 猛吹雪の次の日にスコップを値上げしてもいいか?
- 多くの人は値上げに対して不公正に感じる
- ホモエコノミカス的には需要と供給のバランスから値上げは当たり前
- まず第一に保有効果が重要
- 通常→割増 ではなく 割安→通常
- その上で、状況に応じて経済合理的にではなく、感情的にどう感じるかを見極めることが必要
質問
- ある会社は何とか利益をあげている状況にあります。会社がある地域はリセッションに見舞われていて、大量の失業者が出ていますが、インフレは起きていません。大勢の労働者がこの会社で働きたいと思っています。会社は今年、賃金や給与を7%下げることを決めています。
- 容認できる38%
- 不公正である62%
- ある小さな会社は何とか利益をあげている状況にあります。会社がある地域はリセッションに見舞われていて、大量の失業者が出ており、インフレ率は12%に達します。会社は今年、賃金や給与を5%しか上げないことを決めています。
- 容認できる78%
- 不公正である22%
- 賃上げ率がインフレ率に追いついていなくても、名目賃金そのものが上がっていれば、容認される
- ただし経済学的な合理性には反している
- 金融危機後、私を含め一部の経済学者が、さまざまな理由から中央銀行はインフレ率の若干の上昇を黙認するべきだったと考えたが、これもその1つである。大半の国で雇用はなかなか回復していない。たとえインフレ率が3%になったとしても、企業は実質賃金を十分にカットできることになるので、雇用の回復ペースは速くなっていたかもしれない?
- 割増で得られたスコップの利益は、ユニセフに寄付します
- 多くの人は値上げを公正に感じる
- こういった公正の原則に反してしまったがために失敗した企業は過去に多い
- 銀行ATMの利用率を上げるために窓口手数料を設けた
- 需要に合わせて自動的に価格変動させるコカコーラの自販機を設けた
- 夏のイベント施設では効用効果が上がる(需要が高まる)ため商品も高くなると説明したことで炎上
- 豪雪で立ち往生の車に500人前 餃子の王将、無償で
- UBERは?
- 運転手の苦労が感じられるので公正だと感じているのかもしれない?
- ニューヨーク州では便乗値上げを禁止しているため、UBERに対しても注意し、UBER側も順次対処したが、ニューヨーク州か注意を受けるまで対処しなかったためその分の信用を失った
- 100日後に死ぬワニ事件
- 最終回と同時に商用販売が発表されて、読者の感情を踏みにじられた
- 無料ではあったが、読者が費やした気持ちや時間はすべて広告であったと感じて(騙された)不公正さを感じた
- 需要が突然急増しているときはいつもそうだが、売り手は、目先の利益と、信用を失う長期のリスクとを秤にかけなければならない。信用は一度傷ついてしまうと、その損失は計り知れないものがある。
不公正な人は罰したい(?)(第15章)
- 囚人のジレンマ
- 古典的なゲーム理論
- 黙秘…懲役1年
- 片方が自白…自白した方は釈放され、もう片方は懲役10年
- 2人とも自白…懲役5年
- 取りうる戦略は「協力(黙秘)」か「裏切り(自白)」
- ゲーム理論的には「裏切り」を選択することにもっともインセンティブが働く
- 相手がどちらを選んだとしても、自分にとっては最も良い状態になる
- 理論的には2人ともそれぞれが自白したほうが良いということになる
- ナッシュ均衡
- ビューティフル・マインドの主人公のモデルとなったジョン・ナッシュにちなむ
- ナッシュ均衡
- ただし、40〜50%の人が「協力」を選択する
- 全体を考えると「協力」を選ぶほうが利益が最大化する
- それが道徳的に正しいと感じている?そもそもこういった構造をきちんと理解していない?
- 多くの人は、他の人が協力的であるならば、自分も協力するという条件付き協力者(conditionalcooperators)である
- 古典的なゲーム理論
- 公共財ゲーム
- 10人が1万円札を5枚受け取って、公共財にいくら拠出したいかを無記名で申告し回収する
- 回収した額の2倍の額を全員で分割して受け取る
- →1回目にだいたい半分くらい申告する
- →2回目以降は段々と減っていく
- このゲームを5回1セットとして2ゲーム目を行うと、0ではなく最初の1回目と同じ半分くらいの申告をする
- 最初は他の参加者を好意的に解釈しようとするが、協力率が低いことがわかると、こうした条件付き協力者はタダ乗りに転じる。
- ところが、協力しない人を罰する機会が与えられると、ゲームが繰り返し行なわれる場合でも協力率が低下しないケースがあることが、公共財ゲームの実験で確認されている
- 別の実験では人は不公正な人を自分のお金に代えても罰しようとした→戒め→協力関係の維持
- 一般的な道徳というのは、こうした協力関係の補正から生まれるのかもしれない
- ところが、協力しない人を罰する機会が与えられると、ゲームが繰り返し行なわれる場合でも協力率が低下しないケースがあることが、公共財ゲームの実験で確認されている
確証バイアス
- 確証バイアス
- 人は仮説を支持する証拠だけを探し、反証する証拠を探そうとしない傾向がある
- 意思決定に関する心理学的研究から得られた次の5つの発見
- 人間は自信過剰である
- オーナーやGMやコーチは、選手の能力を峻別する自分の能力を実際よりも高く評価しがちである。
- 人間の予測は極端に振れる
- スーパースターがそんなに簡単に現れるはずはないのに、ドラフト候補選手の質を評価するスカウトは、すぐ「この選手はスーパースターになる」と言ってしまう。
- 勝者の呪いが起きる
- 1つの対象に多数の入札者が競合する場合、その対象をいちばん過大評価している入札者が往々にしてオークションで勝利することになる。同じことは選手にも言える。ドラフトの目玉として1巡上位で指名された選手はとくにそうだ。勝者の呪いとは、こうした選手は活躍するものの、指名したチームが考えるほどには活躍しないことをさす。
- 偽の合意効果が働く
- 人間は一般に、他の人も自分と同じ選好を持っていると考える傾向がある。たとえば、iPhoneが登場したとき、私のクラスの学生に次のような匿名のアンケートをとった。「あなたはiPhoneを持っていますか。また、このクラスでiPhoneを持っている人の割合はどれくらいだと思いますか」。iPhoneを持っている人はクラスメイトの大多数も持っていると考えていたが、持っていない人は、iPhoneを持っている人は少ないと考えていた。ドラフトも同じで、あるチームが特定の選手に惚れ込むと、他のチームも同じように考えていると思い込んでしまう。そのため、お目当ての選手が別のチームにさらわれる前に確保しようと動く。
- 現在バイアスが作用する
- チームのオーナー、コーチ、GMは全員、いますぐ勝ちたいと思っている。ドラフト上位で指名された選手はみんな、低迷するチームを劇的に強くしたり、スーパーボウル優勝へと導いたりする特効薬となることを期待されている。どのチームもいますぐ勝ちたいのだ。
- 人間は自信過剰である
行動経済学とデザイン
- 「明日はもっと貯めよう」プラン
- 老後の貯蓄に回す拠出率を後で上げることをいま決める
- 次に昇給したときにあらかじめ決めておいた拠出率の引き上げを適用するという選択肢を提供する
- 損失回避性の回避
- 現在バイアスを弱める
- 行動を変えるデザイン
- ナッヂ
- 選択をする人が、自分にとってよりよい結果になるであろう決定を、選択者自身の判断に基づいてするように、選択に影響を与える
- 私たちの注意を引きつけて行動に影響を与える環境をつくる、ちょっとした特徴である
- 誰のためのデザイン(ノーマン)
- 「ついやってしまう」体験のつくりかた
- OKボタンとキャンセルボタンの強弱
- 見やすいようにすることさえナッヂと言えるかもしれない
- →正しい判断ができるように誘導している
- サービスのデザインやビジネス設計において、重要な原則を行動経済学は解き明かそうとしている