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About Face 3 — ユーザー理解とモデリング

「About Face 3」のチャプター4〜5を読んで、質的調査としてのインタビューや、ペルソナとゴール設定など、ユーザー理解とモデリング手法について話しました。

Chapter4 ユーザーを理解する: 質的調査

代表的な質的調査手法

  • ステークホルダーインタビュー
    • 主に社内におけるステークホルダーそれぞれへのインタビュー
    • 提案したソリューションに対する批判という形で、後になって軌道修正を強制されるのを防ぐ
  • Subject Matter Experts (SME) インタビュー
    • デザインスプリントでいう専門家インタビュー
  • 顧客インタビュー
    • 顧客とユーザーの違い
      • 顧客は購入意思決定者
      • ユーザーは製品の利用者
    • 代表的な質問
      • 「製品を購入する上でも目標は?」、「意思決定プロセスは?」
    • 顧客とユーザーの違いを意識することはBtoBの勘所だと思う
  • ユーザーインタビュー
    • 特に言うまでも無い
    • インタビューだけでなくユーザー観察も質的調査の一つ
  • 競合商品調査
    • ヒューリスティック評価やエキスパート評価

民族誌学的インタビュー

  • 曰く、観察と1:1インタビューの組み合わせが最も効率的な質的調査
  • コンテクスチュアル・インクワイアリ (Contextual Inquiry)
    • ヒュー・ベイヤーとカレン・ホルツブラットによる、民族誌学的インタビューのテクニック
    • 師匠と弟子モデル
      1. コンテキスト: 師匠にとっての "いつもの場所" で実施する
      2. 協力関係: 尋問ではなく師匠から教わる
      3. 解釈: 師匠の背中を見て、「振る舞い、環境、発言」の行間を弟子が読む
      4. ポイント: インタビュー項目は事前に設計し、弟子が舵取りすることを忘れない
    • 民族誌学 "エスノグラフィ"
      • 調査対象の文化のなかで数年間生活する
      • 本来は文化の慣習や振る舞いを理解しようとするもの
      • About Faceではインタラクションデザインに精神を応用した
  • 民族誌学的インタビューの準備
    • 仮説的ペルソナ
      • アーキタイプ
      • 誰にインタビューするかの当たりをつける
      • BtoBなら職種、BtoCならサービスにおける振る舞いなど
    • 環境に対する配慮
      • 組織規模、組織内の力学の理解など
      • これもBtoBあるある
  • 民族誌学的インタビューの実施
    • 2人1組、1時間
    • インタビューの3step
      • 初期: ドメイン知識の吸収がメイン。手探りになりがち
      • 中期: ドメイン知識を得た上で、ようやく細部を深堀りができるようになる
      • 後期: 新しい発見はなくなりパターンが見えてくる
        • 自由解答形式から選択解答形式への質問が多くなる
    • 基本的なやり方
      • インタラクションが発生する場所でインタビューする
        • 製品が使われてる場所や、その周りの環境に着目
        • ディスプレイに貼ってあるポストイット、脇に置いてあるマニュアルなど
      • 質問を固定化しない
        • 半構造化インタビュー
      • ゴールの話を中心にする
        • 何をするかより、なぜするのか

Chapter5 ユーザーのモデリング: ペルソナとゴール

ペルソナ

  • 複合アーキタイプ
    • 調査からパターンを見出し擬人化
  • ペルソナはステークホルダー間の認識統一ツールの側面が強い
  • ペルソナは次を防ぐ
    • ユーザー概念の弾力性
      • "ユーザー"という概念は、人それぞれ捉え方が多様になりがちで、ぐにゃぐにゃに歪む (弾力性が高い)
    • 自己参照的デザイン
      • デザイナー・プログラマによる自己投影
      • 開発者自身がユーザーになり得る場合に起こりがち
    • コーナーケースを高く見積もる
      • 開発中に近眼的になると、本来は優先度を下げてもいいようなコーナーケースの不具合でも高く見積もってしまう
  • ペルソナは人格化すべし
    • 開発者に感情移入を促す効果がある
    • メソッドアクトという手法もある
      • 俳優に演じてもらい、シナリオのイメージを膨らませる
      • アクティングアウトに近い?
  • 基本的にペルソナは再利用できない
    • コンテキストが違えばペルソナも変わる
    • 複数製品に対応させようとすることコンテキストが広がり、ペルソナ化の難易度があがる
  • "ユーザー"以外のペルソナを作るのもアリ
    • "顧客"のように利用者ではないが、製品に間接的に関わるペルソナを作るのも良い
  • 暫定ペルソナ
    • 所謂、プラグマティックペルソナ
    • どこが推測なのか明言するのが大事

ゴール

  • ペルソナのゴール設定
    • ペルソナはコンテキストであり、その向う先であるゴール設定が大事
  • 3つのゴール
    1. エクスペリエンスゴール
      • 製品を使っている最中にどう感じたいか
        • 所謂、"一時的UX"
      • ユーザーはどのような感じを求めているか
        • 「楽しい」、「自分が賢く感じられる」
      • ノーマンのエモーショナル・デザインにおける本能的レベルのデザイン
        • 五感が最初に知覚する
    2. エンドゴール
      • 作業を実行することに対するユーザーのモチベーション
      • ユーザーは何をしたいか
        • 「17時までに終わらせる」、「スキな音楽を見つける」
      • エモーショナル・デザインにおける行動的レベルのデザイン
        • ユーザーの行動、暗黙の前提、脳内モデルに沿った製品の振る舞い
    3. ライフゴール
      • 長期的な希望やモチベーション
      • ユーザーは誰になりたいか
        • 「よい人生をおくる」、「〜という目標を達成する」、「人気を集める」
      • エモーショナル・デザインにおける内省的レベルのデザイン
        • 長期的な製品との関係性
        • フィリップ・スタルクのジューサー
          • 「レモンを絞りたい」というエンドゴールではなく、「ユニークでありたい」「文化的に見られたい」という欲望 (ライフゴール) を満たす
  • ペルソナの作り方
    1. 行動変数を見極める
      • 活動、態度、適正、モチベーション、技能
    2. インタビュー被験者を行動変数に対応づける
    3. 顕著な行動パターンを見出す
    4. パターン毎にゴールを統合する
      • エンドゴールは3~5個, ライフゴールは1以下、エクスペリエンスゴールは2以下
    5. 重複や完成度をチェックする
    6. 態度や振る舞いの記述
      • ゴールを補完するようなペルソナの態度や振る舞いを物語形式で書く
      • 写真はフォトコラージュにすると伝わりやすい
    7. ペルソナの配役を決める (優先順位付け)
      • ペルソナの優先順位付け。原則的にはペルソナは少ないほうが良い。
      • 主役: UI設計におけるメインターゲット。BtoBにおける管理画面とフロント画面のような対峙するユーザーが明確に変わる場合には主役が複数になることもあり得る
      • 脇役・端役: これらが多すぎるとターゲットが絞れていない兆候。なくても良い
      • 顧客・サービス利用者: 購入意思決定者や、主役が提供するサービスを利用する者
      • 黒衣: 製品のターゲットでは無いことを明示するために使う

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