About Face 3 — Goal Directed Design
「About Face 3」のチャプター1〜3を読んで、ゴールダイレクテッドデザインの考え方について話しました。
- オープニングトーク: 肩こりと針
- About Face 3 インタラクションデザインの極意 | Alan Cooper, Robert Reimann, David Cronin, 長尾 高弘 |本 | 通販 | Amazon
- アラン・クーパー - Wikipedia
- 結局のところ、UI/UXって何ですか?vol.3 ROLLCAKE社のCXO、伊野亘輝さんに聞いてみた | TD
Chapter1 ゴールダイレクテッドデザイン
人間本位のデザインの定義
- アラン・クーパーの考える人間本位のデザインの定義
- ユーザーの好み、ニーズ、モチベーション、コンテキストを理解すること
- ビジネス、技術、ドメイン(対象分野)の可能性、必要条件、制約を理解すること
- 以上の知識を基礎として、形態、内容、振る舞いが役に立ち、使いやすく、魅力的でありながら、技術的経済的にも実現可能性のある製品を作るための計画を立てること
この定義には、表面的なデザインだけでなく、時間尺度の長い体験的なデザインというのはもちろんのこと、ビジネスロジックや技術、マーケティングも含めて実現したうえで、継続的に提供できるようにするための計画全体のことがデザインであるとしている。
今でこそBTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティビティ)のどれもを兼ね添えることがデザイナーとして重要だという考えがあるが、アラン・クーパーはこの頃から同様のことを訴えている。
ただし、ゴールダイレクテッドデザインのチャプターの中では作る人(実際に開発する技術者)とデザインする人は、利害が対立する部分があるので役割を得分けて別々の人がやるべきだとも書いている。
技術的な制約や開発の効率性を考えがちなエンジニアがデザインを考えることは難しいと考えていたのかもしれないけれど、今はそういった複合的なスキルを身に着けた上で、どういった配分にすべきかというバランス感覚が求められているように思う。
ゴールダイレクテッドデザイン
ユーザーの抱えている課題やそれを解決するための行動を理解し考え、デザインすることをかつてドナルド・ノーマンは「行動中心デザイン(Activity Centered Design)」という方法として提唱していたが、この方法では製品を差別化するような画期的なソリューションやユーザーを本当に満足するようなプロダクトは生み出せないと言っている。
デザイナが最初に考えるべき問題は、ユーザーが「なぜ」そうしたいと思うのかという部分であり、人々のあらゆる行動を駆り立てている「ゴール」は何かというのを明らかにし、理解することだ。
これは、takramの「デザイン・イノベーションの振り子」という本にあるリフレーミング的な手法によって、もっと大きな枠組みの根源的な欲求を追求すべきだということだと考えられるかもしれない。
言い換えると、とある課題を解決したい人はどういう人なのか、その前後のコンテクストは何なのか、課題を解決した先にどういうビジョン(こう有りたいという理想の自分)を持っているのかを言語化し理解することが大切だということです。
その人の「ゴール」という根源的な行動原理の大本を理解することができれば、そこに向かう道のりにどんなハードル(課題)が存在するのか、何を重要視するのか(優先順位)が明らかになり、ユーザーの目の前の課題を解決するだけじゃない、本当の意味での人間(の生き方)に寄り添ったデザインが提供できると考えられている。
この考えに基づいて、デザイナはユーザーの調査、ユーザーのモデリング(ペルソナの作成)、コンテクストシナリオ(ペルソナのゴールをどのように達成するか)や要件の定義、サービスや情報の設計を行っていく必要がある。
まとめ
- 「機能」ではなく「ゴール」のデザイン
- たくさんのニーズを満たすための機能郡が、必ずしもユーザーにとって必要なものだったり満足するものではない。
- 結局の所、機能リストの羅列は、ユーザーにとって最適な使い方は何か?ユーザーが目指したいゴールは何でそのための道のりが何であるか考えることをユーザーに押し付けている
- ゴールまでの道のりこそが、デザイナが真にデザインすべき対象だ
- たくさんのニーズを満たすための機能郡が、必ずしもユーザーにとって必要なものだったり満足するものではない。
Chapter2 実装モデルと脳内モデル
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実装モデル(システムモデル)
- 機械やプログラムが実際に動作する仕組みでエンジニアの視点
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脳内モデル(概念モデル)
- 具体的な仕組みとは関係なく、イメージしやすいように単純化したり、(ときには湾曲して)抽象化された動作イメージでユーザーの視点
- ユーザーは具体的な動作の仕組みを理解する必要はないため、ソフトウェアの場合は特に実装モデルと脳内モデルが大きく乖離する。
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表現モデル
- 大きく乖離した実装モデルと脳内モデルの間を橋渡しし、ユーザーが理解しやすいようにデザイナが作り出した動作イメージ(UIや細かなインタラクションデザイン)でデザイナの視点
- 表現モデルは脳内モデルに近ければ近いほど良い(見ただけで使い方がわかる)
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情報化時代の拡張を加えずに機械化時代の人工物をユーザーインターフェースに再現してはならない
- 行き過ぎた「スキューモーフィズム」
- デジタルの世界では、手帳のようにページをめくるという概念は必ずしも必要ない
- カレンダーは月単位でページングして表示すべきか?
Chapter3 初心者、上級者、中級者
- 初級者と上級者の両方のニーズに対応できるUIデザインは難問
- 初心者向けにはウィザードを作り、上級者向けにはメニューの奥底に重要機能を埋め込む→問題解決の諦めだと主張している。
永遠の中級者
- ほとんどのユーザーは、初級者でも上級者でもなく「中級者」
- 知識や技術を必要とするほぼすべての活動は統計的にこれに当てはまる
- 少数の初級者と上級者は、時間とともに中級者に引っ張られるという力学が働く
- 初級者は使い慣れることですぐにステップアップする
- それに当てはまらない人たちは時間とともに離脱する(自分が中級者になれる—使いこなせる—別のプロダクトを探す)
- 上級者は常に高いレベルで維持することが困難であり、中級者と上級者の間を行ったり来たりする
- 初級者は使い慣れることですぐにステップアップする
→結果、永遠の中級者が多くを占めることになる
- プログラマ
- すべての要件と実装を把握しているため、上級者的な視点で考えがち
- 営業やマーケター
- 売り込み先の顧客や提携企業、投資家など製品をよく知らない人にデモや説明することが多いので、初心者的な視点で考えがち
- →大多数の中級者に向けてデザインせよ
考えるべき3つの目標
- 初心者が苦痛を感じることなく、すみやかに中級者になれるようにする
- 上級者になりたいと思っている中級者の前に障害物を置かない
- 何よりも、永遠の中級者がその位置に留まる限り幸せでいられるようにする
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初心者を初心者扱いしない
- 的確でスピーディに中級者となれるようサポートする
- 脳内モデルの考え方を利用して、イメージだけですぐに理解できるようにする
- 初心者に必要なのはヘルプページのようなリファレンス(説明書)ではなく、全体像をサクッと掴むためのガイドツアー(オンボーディング)
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上級者は効率性やショートカットを求める
- 日常的に使うツールへの素早いアクセスを求め、頻繁に利用する機能を効率よく実行するための方法を覚えたり、仕組みを自ら作り出す
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要議論
- 永遠の中級者は自分にとっては不要な、使い方すら知らない高度な機能があることを知っているが、それがあるということをわかっていると、この製品に投資したことは間違っていなかったと安心する?
(余談)上級者を志向する人のために配慮されたデザイン
- ユーザー自身が難易度調整できる仕組み
- やろうと思えばできる
- より効率的にできる(ショートカット)など、ユーザー自身の判断で難易度とともに使い勝手を変えられる
- 簡単にできるほど良い
- Bダッシュやショートカットコマンド
- Bダッシュは簡単にグラデーションで調整できるのですごい